Denebola① 綾歌星 〝綾歌あやうた〟とは三拍子の音曲

 獅子座β星(獅子座の中で二番目に明るい星)Denebolaデネボラの別名を「綾歌星」と言うそうです。

『儺の國の星拾遺』p.163より

 星座図では獅子座の後ろ足部分になります。
 (東天にあるときは中轅星の10°程下。)

太宰府政庁跡の大極殿あたりから見た東天の獅子座
太宰府政庁跡の大極殿あたりから見た東天の獅子座

 星の名前になっている「綾歌あやうた」とは、三拍子の音曲のこと。また「あや」は、北方を意味する「あへ」に由来するとも書かれています。

 〝あや〟とは〝あへ〟即ち北方を表現する古語であった。綾歌あやうたを高麗では斎歌さいかとよぶ旋律であった。〝さい〟は三の古語であって、あきらかに三拍子の音曲であった。大和の催馬楽さいばらがこの系統であって、紫歌さいが、或いは雑歌さいか、時には設楽歌しだらうた椎葉歌しいばうた柴雅歌さいがうたなどとも書かれた古曲であった。

『儺の國の星拾遺』P.165

 まとめると、北方を想起させる三拍子の楽曲、というところでしょうか。

 日本の伝統的な音楽に三拍子の曲はないというのが通説ですが、著者によると、神楽舞の中にある三拍子の踏歌がこの「綾歌」なのだとか。

 神楽舞の中に特に三拍子の踏歌があった。まさに遠い祖先の心からなる音を、足を挙げて神に謝する儀式であった。
(中略)
 蝦夷で〝ゆうから〟、津軽で〝じょんがら〟、そして琉球で〝やあく〟と言う。もし漢人が音写するならば、寿語じゅご祝歌と書くことになる。時には祖先伝来の歴史を綴る歌謡物語であり、又時には神に納める奉祝讃歌である。

(『儺の國の星拾遺』p.165)

 右の文中に出てくる〝ゆうから〟はアイヌ民族に伝わる叙事詩、〝じょんがら〟は三味線の伴奏がつく民謡のことだと思われます。
 琉球の〝やあく〟はわかりませんでした。(個人的には「世乞ゆーくい」が近いのかな?と思いましたが。)

 〝〟と〝〟は硬口蓋接近音で似ています(〝ょんがら〟〝ゅご祝歌〟の語頭子音と〝うから〟〝あく〟の語頭子音)ので、当時の当地の人にこう表記される音曲があったと思われます。

 それは単なる三拍子の楽曲ではなく、「時には祖先伝来の歴史を綴る歌謡物語であり、又時には神に納める奉祝讃歌」だったのですね。

 デネボラは綾歌星の他に夜楽星*よかぐらほしの別名も持っていて、この星と神楽が結びついているのは確かなようです。

*私注:「よかぐらぼし」の漢字は普通「夜神楽星」となるところですが、原文は「夜楽星」となっています。「夜神楽星」の脱字かもしれませんがそのまま書いています。

 

[最終更新日]2020/07/15