夜空の星々は様々な国でいろいろな見方をされています。
西洋でコップ座アルケスとされる星は、中国では二十八宿の一つ、「翼」を構成する星となります。
西洋式星座と中国式星座の重なりがわかるよう、図にしました。
下図の青線が「コップ座」でピンクの線が「翼宿」になります。
文化が違うと星のまとめ方が違うのですね。
そして「翼宿」の名の通り、中国式星座だとなるほど鳥が“翼”を広げているように見えます。
翼宿の形について『儺の國の星拾遺』には次のように書かれています。
大陸の星宿名は翼である。この星が南の空に見える頃は晩春で、鶴や鴨が翼を広げて霞の中を北に飛びさる頃である。
(中略)
翼とは鸛が羽を広げた形であるが、漢方の言葉では、女人が腰をひらき子を産む姿の意に流用されていた。(『儺の國の星拾遺』p.49)
鸛が羽を広げた形だそうです。
鳥が翼を広げた形と言えば白鳥座が思い起こされますが、中国では鸛なんですね。筆者の言に依れば。
鳥に見立てる星空の場所が全然違うのが面白いです。

(上の図は視野角180度に設定していますので、肉眼ではこうは見えません。)
話は変わりますが、翼宿の和名を「
翼宿を構成する星でもあるアルケスの別名「
もしかすると「タツケ」の呼称が先で、訛って「タスキ」になり、「襷」の字を当てたのではないか、なんて思いました。
ちょっとややこしくなりますが、『儺の國の星拾遺』には別の「タスキ」星もあります。
それは獅子座のデネボラです。字は「田耜」星で、やはり田作りを連想させます。
水田の準備をするのに、アルケスを見ていた人たちとデネボラを見ていた人たちがいた、ということでしょうか。
もしかするとアルケスを指標にしていた人達が東進したのかも知れませんね。
デネボラが地平線に現れてから40分ぐらいしてアルケスが上りますから、ちょうど筑前と常陸くらいの経度差になるんです。
星から情報を得るのに緯度経度差は重要です。
同じ名前なのに違う星なのは、そういうこともあるのではないか、と思っています。
二十八宿図
By 柄沢照覚(柄澤照覺) – 安部晴明簠簋内傳圖解(あべのせいめい ほきないでんずかい) 東京神誠館 1912年 http://kindai.ndl.go.jp/index.html, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12390152