こんな話が書かれています。
猿田 とは、水漲田 の略である。古語で “さ” は水であった。早稲 は籾から出た芽が水の上に細くのびたばかりの稲をいう。してみると早稲とは発芽を水温によって早めた陸稲のことになるのである。四月に植え八月に刈る品種が育つところが猿田であった。(『儺の國の星拾遺』p.31)
「猿田」というと猿田彦を思い浮かべますが、これは「水漲田」つまり水を張った田のことだというのです。
音韻的に、「サハリダ」をどう略すれば「サルタ」になるのかさっぱりわかりませんが、そういうものとしておきます。(参照:サ行子音の歴史・他/国立国語研究所)
そして語義として、“さ”は水の古語なのだそうです。
そういえば関東の方で、田植え仕舞いの行事“さなぼり”の“さ”は「水」を意味しているという説があるそうです。
この言葉、案外古形を残しているのかもしれませんね。
また長野県上伊那郡の方言では、“さ”は水田の面積のことだそう。
これが
“発芽を水温によって早めた陸稲”というのは、収量を上げるための工夫でしょうか。
これは直播きではなく、苗を育成するやり方です。
また、そもそも水田の水は寒さから稲を守るためだそうです。
水が稲を保温するのだそう。
水で発芽を早め、水で田を保温すれば、早く収穫できるし収量も増える。
それが「サルタ」なんですね。すごい。
そういえば「森のくまさん」という食味日本一になったお米があるのですが、生産者の方が平山温泉に種籾をつけているのを見たことがあります。
種籾の発芽は水温と浸した時間の積算だと聞きました。
水温が温かいとつける時間を短く、冷たいと長くするのだそう。
水温が低い方が安定して水分を吸収するので失敗が少ないそうですが、品種やその年の天候なども考慮して行うのだそうです。
確かに、苗床の時期に適温でなければなりませんし、定植する頃の天気も大事です。
籾を漬ける段階、あるいはその前に、その年の田植えや収穫時期の天候を予想するんですね、すごいです。
陸稲から水稲への改良技術は、こんな風に今も生きているのですね。
「猿太星」の由来が「水漲田」とそこで栽培する赤米に由来するのだとしたら、この星を指標に季節を知り耕作した人たちがいたと言うことになるでしょうか。
浮かんできたワードは「夏至」と「稲作」。
この星が見える頃、夏至と早稲の収穫を迎えたからです。
ふと思い出したのでメモ。
田植えが機械化される前は、籾をつけるための“種池さらえ”はコミュニティの共同作業でした。
「種池」や「種池という地名」をたどると、稲作のことがわかるのかもしれません。